写真は前回に続いて銚子です。
最初、犬吠埼の灯台が目当てで旅行した銚子だったけれど、その後も度々訪ねました。
下調べをすることなく訪ねていた所為もあってか、海以外は印象に薄い。
ただ一つ強烈な印象に残っているのが夜のコンビニ。
銚子にはどうやら大学があるらしくて、ポツポツ学生らしき姿があります。
昼間は海などでデートしている姿もある。
それが夜になるととっぷりと暗くなるのですが・・銚子の夜は本当に暗いのだ・・。
そのコンビニはオアシスのように闇の中で輝いていた。
一組のカップルがそのコンビニから出てきて闇に紛れました。
コンビニの光の洪水から飛び出したカップルは彼ら自身も輝いているようにぼくには思えたのです。
光のオアシスから闇に紛れても2人は輝いている。
銚子には海があり山がある。
学生には若さと時間がある。
それが眩しくて、網膜に焼き付いた。
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秘密基地 その4
この秘密基地作り、ぼくの記憶では小学校3年生なのだけれど、基地作りのきっかけとなったテレビ番組「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」の放送から逆算すると実際はどうやら小4だったようだ。
地下基地にするつもりが深い穴が掘れず、結局は近所の林の中に陸上基地を作った。
覆いかぶさるように倒れた木にブルーシートを被せただけの簡易的な基地だ。
その基地に用意したものはイスと武器だった。
イスは雑誌を積み重ねたものでぼくらはそれに腰を下ろした。
雑誌は湿っていてずっと座っているとズボンまで冷たくなった。
武器も拾い集めたものばかりで、それはブーメラン代わりの鉄板や、
ムチ代わりのチェーン、それに鉄パイプなどだ。
物騒なものばかりだけれど、もちろん出番などなかった。
それから基地の中に小さな穴を掘って、中に枯葉を敷き詰めてペット代わりに
捕まえたトカゲの家にした。ただこれは出入り自由だったので翌日以降このトカゲは
帰ってこなかった。
ぼくらはこの基地に3日と空けずに集まったのだけれど、
残念なのは基地内ですべきことが無いことだった。
湿った雑誌に座り、おしゃべりするくらいのことしかできない。
テレビの「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」のような解明すべき秘密組織があるわけでもないし、
ライバルや敵がいるわけでもないのだ。
そうなるとせっかく作ったこの基地に隠れる意味も薄れてしまう。
それでも、基地に執着した。
自分たちだけの場所、秘密基地にはそれだけの魅力があった。
その日は基地に集まって間も無く雨が降り始めた。
ブリーシートを被せて作った基地は雨宿りにぴったりだ。
そのブルーシートを雨が打つ。
ぼくらは相変わらず湿ったままの重ねた雑誌に座り、
基地の中から雨の降る外の様子を見ていた。
ふと、ぼくは、周りの世界と自分とのつながりに違和感を感じた。
きっとブルーシートをバラバラ打つ雨音と、こうして雨宿りをしている単調な時間のせいなのだろうけれど、自分の中の現実感が揺らいだ。
その揺らぎで心拍数が上がり、ドキドキした。
でもその揺らぎは木々の切れ目から、誰かのさしている傘が横切るのが見えた途端、正常に引き戻された。
ぼくらは変わらず林の中に張ったブルーシートの下にただ座っているだけだ。
せっかくの秘密基地なのに物足りなかった。
退屈なのだ。
ここにはテレビもなく、お菓子もない。
そして何よりも「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」に出てくるような怪人や
事件ないことが口惜しかった。
それにこの秘密基地での探検気分も、トイレに家に帰ればすべて台無しだった。
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続きはまたです。