写真は福生のとある学校の運動会練習風景。
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秘密基地 その9
自分たちで作ることをやめて、出来合いの場所を秘密基地に
することにしたぼくたちだったけれど、防空壕は使えず、
次に見つけたのが道路の“排水溝”だった。
排水溝と言ってもぼくらが基地にしたのはコンクリートの蓋がのった、あの幅の狭い“水路の部分”では無くて、
格子状の鉄蓋のかかった“貯水部分”で、
それは開通前の道路脇にあって、まだ使われていなかった。
指をかけて力を込めると、その格子状の鉄蓋は思いがけず
簡単に引き上がり、ぼくらは中へ降りた。
水路に比べれば広いけれど、4人も入れば貯水部分も
窮屈で息苦しい。ただし風が入らず暖かかった。
ぼくらはそこへバスマットを持ち込んで敷き、
他にも自転車の空気入れや、工事現場で拾った金具、
壊れたテレビ、色水を入れた水鉄砲、などなど
ガラクタを持ち込んだ。
準備が終わりバスマットに座り込む。
思いがけず良い基地だった。
それからぼくらはこの秘密基地を足がかりにこれから
どんな冒険ができるかを話し合い、この日は解散した。
翌日も秘密基地へ。
でもどんなに話し合っても冒険の良いアイディアは
出てこない。
排水溝の狭い貯水エリアの中にいて、することがない。
サイコロのようなほぼ正方形の場所にぼくら4人は潜り
込んでいた。ここに貯水エリアの2周り以上も小さな
排水溝の口が前後に開けている。
その口を背にして2人、それから穴のないコンクリート
の壁をしにして2人が敷いたバスマットの上に座っていた。
一度ならず、その排水溝の穴をたどってみようか、と
ぼくらは話し合った。でもその穴の行き着く先はわかって
いる。そんなものは冒険と言えないだろう。
それからまた、ぼくらは何度も自分たちの真上・・
格子状の鉄蓋・・から除く青空を見上げた。
外は明るい。
ここは暗い。
不意にカツカツと響く足音が近づいてきて、ドキリとする。
どうやらそれがヒールを履いた女性の足音らしいとわかり、
ぼくらはにわかに色めきだった。
「おい。ここならパンツ丸見えじゃないか」
でもその女性はぼくらの潜む貯水エリアに影だけ落として
歩み去った。残念、と思う間も無く次なる足音が響いた、
がそれは作業服の男だった。
その男は鉄蓋の真上に立ち、まだ上を見上げていたぼくらは
顔に靴底の砂を浴びせられた。
また翌日、秘密基地の鉄蓋を開いてぼくらは驚いた。
敷いたバスマットが斜めになっている。
でもその原因はすぐに分かった。
犯人は昨晩の雨だ。
排水溝が本来の目的を果たしたらしい。
雨水の流れで、ぼくたちのガラクタ類も押し流されて
しまったのだ。
バスマットの位置を戻して座るとお尻が濡れてしまった。
足元もまだ濡れている。
濡れたお尻の不快感を我慢しながら、残されたものと、
流されたものを確認する。
押し流すには少々重たかったのだろう、
見ると排水溝の口のところにガラクタの一つ、工事現場で
拾った金具が転がっている。
見当たらないのは水鉄砲と自転車の空気入れだ。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
続きはまたです。
犯人は昨晩の雨だ。
排水溝が本来の目的を果たしたらしい。
雨水の流れで、ぼくたちのガラクタ類も押し流されて
しまったのだ。
バスマットの位置を戻して座るとお尻が濡れてしまった。
足元もまだ濡れている。
濡れたお尻の不快感を我慢しながら、残されたものと、
流されたものを確認する。
押し流すには少々重たかったのだろう、
見ると排水溝の口のところにガラクタの一つ、工事現場で
拾った金具が転がっている。
見当たらないのは水鉄砲と自転車の空気入れだ。
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続きはまたです。
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