写真のオブジェは新宿のオフィス街にある。
この一角にCanonのサービスセンターがあり、点検に出したカメラを
受け取った帰りにこの写真を撮ったのだった。
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写真暗室で宇宙人に出会った話、前回の続きです。
2つ上の先輩が卒業してしまい、後輩も入らず、高校2年の1年間は
写真部員はぼく一人だった。
顧問は元々野球部か何かを指導していた人で(母校は野球で有名だった)
それがなぜ写真部の顧問に就いたのかわからないけれど、
写真に関する知識はあまりなくて、部の活動にもそれほど熱心ではなかった。
だから暗室作業にも、まだ先輩がいた頃に一度顔を出したきりだった。
(まぁ、狭い暗室に男2人で籠るってのもぞっとしないが)
だからその日の放課後も1人で暗室作業をしていた。
赤い電球がぼんやりと暗室内を照らしている。
その中でぼくは繁華街でのスナップ写真をプリントしていた。
フィルム写真でのプリントには「引き伸ばし機」を使う。
フィルムは大抵6カットごとに切られてシートに収まっているから、
36枚撮りのフィルムだと、シートに6列フィルムが並ぶ。
その中から気に入った1コマに光が当たるように引き伸ばし機にセットする。
フィルムがセットできたら次はピント調整だ。
写真は撮る時にもピント合わせが必要だけれど、
フィルムではプリントにもピント合わせが必要なのだ。
引き伸ばし機の中に収まっている電球を点灯すると、
まるで映写機が画像を投影するように、写真画像がプリント台に投影される。
投影された写真のピントは専用のルーペを使って合わせる。
そのピント合わせだけれど、これにはちょっとしたコツがある。
ルーペを覗いて、フィルムの粒子がくっきり見えるところにピントを合わせるのだ。
その頃は特にテーマもなく写真を撮っていたし、暗室作業にしても、
ただ、真っ白な印画紙に写真画像が浮かび上がってくるのが不思議に面白くて
やっていたようなものだった。
その日もそうだった。
ぼくは暗室に籠って、
科学者がフラスコや試験管を持って研究しているような(イメージ)
感じで、ただしあまり意味もなく、淡々とプリントをしていたのだった。
それが、何枚くらいプリントしたのか覚えてないが、急に虚しくなった。
自分のしていることが急に無意味に思えた。
確かに面白いには面白いのだけれど、面白いばかりで意味がない。
いくらプリントしても見てくれる人がいるわけでもないのだ。
そう思って、急に我に返ってしまった。
そうしたら暗室の中が息苦しく感じられたので、外へ出た。
外はいつの間にか日が暮れ始めていた。
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※長くなりました。続きはまた近日に。