2017年8月19日土曜日

2017/08/19 秘密基地 その7




秘密基地 その7

「凄い基地がある」と聞いて来てみたら、それは防空壕だった。
中は真っ暗。懐中電灯を点けると足元から壁までびっしりとカマドウマ?が張り付いていた。足元でサクサク音を立てていたのは枯葉ではなくその虫だったのだ。ショックだった。それでもぼくらはその防空壕の入り口から離れなかった。それはもちろん防空壕の凄さもあったけれど、それよりもいつも遊んでいるメンバー(ぼくら3人)以外の仲間がいることの特別な感じがあったからだ。
解散するのがもったいなくて、みんなで防空壕の周辺を見て回った。すると林の中(防空壕の上部に当たる)に、子供がやっと通れるくらいの狭い穴を見つけた。すっかり藪で覆われていたけれどその穴は防空壕につながっていた。
これはいざという時のための脱出口だったのだろう。
「これでカマドウマさえいなければ素敵な秘密基地になるのに」などと言って騒いでいたら、そこを自転車で通りがかった1人のおばさんが、「こんなところで遊んじゃいけない。もしも崩れたら大変。土に溺れるのは水で溺れるより何倍も苦しいのよ」とお説教を始めた。
カマドウマに恐れをなしてもう防空壕に入るつもりじゃなかったので、本当ならば「ここで遊ぶな」と言われても、じゃあ別の場所で遊ぶからいいや、ってなものだ。だけどぼくら3人は自分たちの秘密基地を壊された直後だったのもあってそのおばさんの言葉にムッとした。それでぼくは、
「なんで水に溺れるより苦しいなんてわかるの?土で溺れたことなんてないでしょう?」と、反論してした。
するとおばさんは目を釣り上げ、「あなたのお母さん知っているわ。言い付けるから」と叫び、「あなたたちがここから離れるまでここから離れない」と言って、防空壕の前に立ちふさがった。おばさんの剣幕におされ、その場を離れた。
そして結局、次の基地を探すことになった。


防空壕に洗礼を受けて、ぼくらの秘密基地作りは終わった。

防空壕レベルの基地を自力で作るのは大変な事なのだ。
ましてや基地作りのきっかけになったテレビドラマ、
「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」に出てくるようなものとなるともう、どこから手をつければいいのかさえわからない。ぼくらはただの竪穴(3人が座れる程度の)を掘る事すら断念したのに、覇悪怒組に出てきた秘密基地はコンクリート製で、梯子を使って地下に降り、居心地良さそうで、しかも潜望鏡まであるのだ。
秘密基地作りは努力に見合わない、、。早くもそんな結論に達してしまった。
水道(トイレ・風呂)・電気・エアコン完備の「家」は居心地が良すぎるのだ。その心地いい「家」を上回る秘密基地を作るのは不可能に思えた。
そんなこんなで残念な事?に、次なるぼくらの基地はまたも大人が作ったものになってしまった。

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今回の写真はずいぶん前に撮ったもの。印象的な黒い雲だった。


続きはまた。

2017年8月13日日曜日

2017/08/14 夏休みと、ヒアリと、



写真は千葉県で撮ったもの。風力発電の風車。

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ヒアリのニュースが絶えない。

検索してみると蟻の種類はとても多く、現在およそ1万2千種類が見つかっていて、
日本では280種類が確認されているとか。

8月も半ば、夏休みだ。
ぼくは小学校3年生の夏休みほぼ一ヶ月を従兄弟の住む長野で過ごした。
従兄弟の父は蝶の採取を趣味にしていて、その夏休みぼくはその叔父とともに
虫取り網を持って何回か蝶の採取に行った。
一つ年下の従兄弟はあまり昆虫や蝶を捕まえるのを面白がらず、
ぼくの方が面白がっていたのもあって、その日は叔父とぼくと二人で蝶を探しに行った。
車でどのくらい走ったのか定かではないけれど、ある山の麓で車を止めると、
その山に叔父とぼくは分け入った。
普段人が入ることなどほとんどないのだろう、山は鬱蒼としている。
木々がぼくの視界を頻繁に遮る。
多分叔父はぼくの歩く速度に合わせてくれていたのだと思う。
それがしばらく山を登っていくと、どうやら目当ての蝶を見つけたらしく、
「自分が戻るまでここを動かないように。それからその辺の石は踏まないように」と
言い置句と、叔父は驚くほどの速さで山を登り始めた。
ぼくはしばらく叔父の背中を追っていたけれど、それはすぐに見えなくなった。
叔父の立てるガサガサ言う音が聞こえなくなってから、多分1分ほどは静かにしていた。
山の中にぽつんとしていて、ぼくはすぐにつまらなくなった。
そこには見渡す限り、木と隙間から見える曇り空と足元の地面しかない。
それを交互に見ながらここに素敵な蝶が現れないか、と考えたけれど現れず、
次に叔父を追いかけようか、と思ったけれど叔父がどこら辺りにいるのかもう
分からない。嫌になって下山するにもいくら乗り出しても道路が見えず、
ここには山道もなく迷子になるのが怖くて動くに動けなかった。
叔父が迎えに来るまで待つしかない。とにかく待とう。
そういうことになった。
ぼくはまた木と空と地面を交互に見ながら叔父を待つ。
どのくらい待ったのか、分からない。
あまりの退屈さにジリジリしていると、「石を踏まないように」と言った叔父の
言葉が思い出された。
なぜ石を踏んではならないのか?
ぼくは足元にあった大きめの石ころをちょん、と蹴ってみる。
それからその様子を叔父に見咎められないかと周囲を見回す。
が、何も起きない。
またただただ待ち続ける。
木を見て空を見て地面を見る。
と、足にアリがたかっている。
手で払う。
もう一匹アリがいる。
手で払う。
アリがどんどんぼくの足を這い上がってくる。
驚いて、数歩後ろに下がる。が、そのはずみで他の石を踏む。
と、その石の下からたくさんのアリがわらわらと現れてぼくの足をよじ登る。
少し怖くなって、抱えていた虫除けスプレーを足にかける。
それに驚いたのか、ありがぼくの足を噛む。
払いのけてもスプレーをかけてもアリは次々現れる。
そうしてしばらくアリと格闘していたら、叔父が戻ってきた。
追いかけて行った蝶を捕まえたのか逃げられたのかを聞かなかったけれど、
ぼくの足元を見るなり、石、踏んだのか。ここらの石の下はアリの巣だから、
踏むと怒って襲ってくるんだ。まぁ噛みつかれてもたいして痛くはないけどね」と
言い。それからぼくを連れて下山したのだった。
それ以来、ぼくはアリを見るとたまにその時のことを思い出す。
でもそれ以来、ぼくはそんなアリとは出会っていない。
でもきっと、それはそれほど珍しいアリではないのだろう、と思う。
ヒアリのニュースから、またその夏のことを思い出したのだった。
アリは1億年以上前にスズメバチの祖先から別れて進化したと考えられているそう。
通りでアリにも毒や羽があるわけです。
また今度スズメバチの思い出?も書きたいと思います。

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思ったより長くアリについて書いてしまったので、
「秘密基地 その7」は次回です。