秘密基地 その7
「凄い基地がある」と聞いて来てみたら、それは防空壕だった。中は真っ暗。懐中電灯を点けると足元から壁までびっしりとカマドウマ?が張り付いていた。足元でサクサク音を立てていたのは枯葉ではなくその虫だったのだ。ショックだった。それでもぼくらはその防空壕の入り口から離れなかった。それはもちろん防空壕の凄さもあったけれど、それよりもいつも遊んでいるメンバー(ぼくら3人)以外の仲間がいることの特別な感じがあったからだ。
解散するのがもったいなくて、みんなで防空壕の周辺を見て回った。すると林の中(防空壕の上部に当たる)に、子供がやっと通れるくらいの狭い穴を見つけた。すっかり藪で覆われていたけれどその穴は防空壕につながっていた。
これはいざという時のための脱出口だったのだろう。
「これでカマドウマさえいなければ素敵な秘密基地になるのに」などと言って騒いでいたら、そこを自転車で通りがかった1人のおばさんが、「こんなところで遊んじゃいけない。もしも崩れたら大変。土に溺れるのは水で溺れるより何倍も苦しいのよ」とお説教を始めた。
カマドウマに恐れをなしてもう防空壕に入るつもりじゃなかったので、本当ならば「ここで遊ぶな」と言われても、じゃあ別の場所で遊ぶからいいや、ってなものだ。だけどぼくら3人は自分たちの秘密基地を壊された直後だったのもあってそのおばさんの言葉にムッとした。それでぼくは、
「なんで水に溺れるより苦しいなんてわかるの?土で溺れたことなんてないでしょう?」と、反論してした。
するとおばさんは目を釣り上げ、「あなたのお母さん知っているわ。言い付けるから」と叫び、「あなたたちがここから離れるまでここから離れない」と言って、防空壕の前に立ちふさがった。おばさんの剣幕におされ、その場を離れた。
そして結局、次の基地を探すことになった。
防空壕に洗礼を受けて、ぼくらの秘密基地作りは終わった。
防空壕レベルの基地を自力で作るのは大変な事なのだ。
ましてや基地作りのきっかけになったテレビドラマ、
「おもいっきり探偵団 覇悪怒組」に出てくるようなものとなるともう、どこから手をつければいいのかさえわからない。ぼくらはただの竪穴(3人が座れる程度の)を掘る事すら断念したのに、覇悪怒組に出てきた秘密基地はコンクリート製で、梯子を使って地下に降り、居心地良さそうで、しかも潜望鏡まであるのだ。
秘密基地作りは努力に見合わない、、。早くもそんな結論に達してしまった。
水道(トイレ・風呂)・電気・エアコン完備の「家」は居心地が良すぎるのだ。その心地いい「家」を上回る秘密基地を作るのは不可能に思えた。
そんなこんなで残念な事?に、次なるぼくらの基地はまたも大人が作ったものになってしまった。
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今回の写真はずいぶん前に撮ったもの。印象的な黒い雲だった。
続きはまた。
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