2016年7月2日土曜日

2016/07/01 宇宙人と出会いました(その3)解決編




写真は東京タワーの展望台から撮ったもの。
右側のビルは「六本木ヒルズ」だ。
東京タワーの展望台に上がるまで、東京タワーと六本木ヒルズが
こんなに近いなんて思わなかった。
ここの展望台にはこれまでに2回上がった。
1回目は勤めていた写真スタジオの社長と(仕事で)だった。
デート中のカップルが多かったので上へ上がるエレベーターの列に並びながら
複雑な気持ちだった。
2回目がこの写真を撮った時で、この時は1人だ。

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

写真暗室で宇宙人と出会った話、続きです。
小さな赤いランプの灯る暗室での作業に、急に息苦しさを感じて外へ出ると、
外は日が暮れ始めていた。
数人、今日の部活を終えて体操着から制服に着替えたものと思われる学生が
部室から飛び出してくると足早に下校を始める。
いつの間にかかなり長い時間、暗室作業をしていたようだ。
何時まで学校にいて大丈夫なのかをぼくは知らずにいたし、
きっと顧問は暗室にまだぼくが残っているなんて思ってもいなかっただろう。
そろそろ切り上げなきゃならない。
ただ、写真の印画紙から画像を浮かび上がらせる現像液は傷みが早いのだ。
ダメになってしまう前にできればもう数枚だけでもプリントしたかった。
ぼくは暗室に戻るとなんとか気持ちを切り替えて作業を始めた。

扉を閉めると暗室の中は静かで、この部室の外に校舎があることや、
他の部の部室があることや、まだ残っているだろう自分と同じ学生や教師が
いることが信じられない気持ちになった。
そして、さっき慌てて下校していた学生の姿が脳裏に浮かんだ。
すると、この学校に残っているのはもしかしたら自分1人なんじゃないか
と言う思いに駆られ、また軽いパニックのようなものに襲われたのだが、
自分の気持ちをなんとか落ち着かせて、引き伸ばし機にフィルムをセットした。

引き伸ばし機のスイッチを入れると白黒の写真画像が真下に投影される。
その画像の適当な場所に特殊なルーペを置き、ピントを合わせるために
ぼくはそのルーペに目を当てた。するとその中に宇宙人がいた。
あまりの事に、最初は我が目を疑った。
それから良く目を凝らして見たのだけれど、それは正に宇宙人であった。
ぞっとして、今ここに独りきりなのが心細くて仕方なくなった。
こんなことってあるだろうか。

ルーペから目を離して顔を上げる。自分を落ち着かせる。
そして投影画像の上からルーペをどかして、肉眼で画像を見てみる。
すると・・・宇宙人がいない・・。
でもさっきの位置にもう一度ルーペを置いて覗いてみる。と、いる。
宇宙人がいる。
いわゆる「グレイ・タイプ」とは少し違うけれど、グレイとETを足して割った
ような宇宙人がどうしてもそこにいる。
恐くなって、すべてほっぽり出して下校してしまおうか、と一瞬思った
のだけれど、このままでは帰れない。こんな馬鹿馬鹿しい話はないのだ。
この広い宇宙には宇宙人がいるかもしれない。でも、この渋谷の駅前
スクランブル交差点の人混みを撮った写真の中に宇宙人が紛れ込んでいるなんて
信じられない。仮にもしいたのなら誰かが気がついて大騒ぎになっていたはずだ。

ルーペの中の拡大された映像では解決しない。
とりあえずプリントすることにした。
引き伸ばし機から投影された画像が、セットされた印画紙に焼付く。
その印画紙を現像液に浸すと、あら不思議。写真が浮かび上がる。
写真の浮かび上がった印画紙を別の薬剤に浸けて定着させたら、
最後に水洗いして、写真を乾かせば完成。
ただ実際は定着作業まで進めれば暗室の電気をつけても大丈夫だ。

電気をつけて出来上がった写真を見る。
宇宙人のいる辺りを良く見る。
スクランブル交差点を歩く人人人。
その中に1人の男。
その男が被っている帽子に、あの宇宙人が描かれていたのだった。

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なんだかんだ言っても楽しませてもらっていた暗室だったが、
ぼくが高校2年の夏休みに取り壊された。
それは「教室から暗室が見えるよりも、花壇があった方が受験生にとって
環境がいいから」という理由だった。

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