2020年5月15日金曜日

2020/05/15 秘密基地その11

写真は10年ほど前のもの。最近はすっかりスマホカメラばかり使っているけれど、この時はまだガラケーだった。だからこの写真は一眼レフで撮っている。

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

秘密基地 その11

狭くて息苦しい穴から抜け出し、排水口の蓋を押し上げて顔を出すと、そこにおばあちゃんが立っていて、不思議そうに僕等を見ていた。
とっさに叱られると思った。
でもおばあちゃんは口を開かず、僕等を見ているだけ。
何か言い訳しなきゃと思い、ぼくは「大事なものを落としちゃって、探してたんだ」と話した。
「見つかった?」と聞かれて、見つかったと答えると、良かったね、と言いながらおばあちゃんは中を覗き込み、狭い排水口の中に4人もいるのを見て、「ツバメちゃんみたいね。気をつけてね」と言って、離れていったのだった。
長いこと何が「ツバメちゃんみたい」なのかが分からなかった。でも、今ならわかる。

それから少ししてみんなの塾通いが始まり、新しい秘密基地づくりの機会はなくなった。楽しい基地づくりよりも勉強を優先する理由がぼくにはわからなかったけれど、そんなぼくも、その半年ほど後から塾通いをするようになった。
塾へ行かせることに決めた、と言われて「学校に行ってるじゃないか。これ以上勉強なんて嫌だ。今は遊びたいんだ」と母親に言ったのを覚えている。
開放された自由な空気感が秘密基地にはある。逆に束縛するもの、当時それは親や教師だった。その秘密基地づくりができなくなって、しかも塾の講師という新たな敵ができてしまったのだった。

それから義務教育を終え、高校を出て、一人暮らしを始めた。そのスタートは学生マンションで、いまも集合住宅に住んでいる。でもそれはあの頃憧れていた秘密基地とはやっぱりどこか違う気がする。

0 件のコメント:

コメントを投稿