そうそう、アストロ球団の「殺人L字投法」について書いたけれど、当時小学生だったぼくにとって、現実と漫画の境界は曖昧で、幼馴染を相手に何回もそれを練習した。他の多くの漫画でもそれは同じで、「ゲゲゲの鬼太郎」では妖怪の存在を信じて妖怪探しをしたし、「キテレツ大百科」ではボールと洗面器でコロ助を作ろうとした。そんなぼくを見かねた母がある日片っ端から漫画を処分してしまった。残ったのは「美味しんぼ」1冊と「クッキングパパ」1冊だけで、それ以降のぼくはその2冊を交互に読むことしかできなかった。なんとそれは高校3年まで続き、受験を控えたぼくは夜な夜なその2冊に読みふけていた。
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“ノックの音”
進学がきっかけで18歳から一人暮らしを始めた。
と言うか、親への共依存から逃れるべく、進学をきっかけに一人暮らしをすることにしたのだった。
でも実際は学生マンションで出来た友人に甘え通しで、ぼくから親代わりにされた彼はとても大変だったはずだ。
大学はひどい田舎にあり、もともとは学生寮だったその学生マンションは田んぼの中にぽつんと建っていた。
周りにあるのはひたすら、山、田んぼ、古墳と寺で、ティーンエージャーが住むにはのどか過ぎる環境だった。
マンション名は「シティコート」なのだが、シティと言うにはあまりにそこは鄙び(ひなび)ていた。
だから、と言うのではないけれど、一人暮らしを始めたぼくは一人きりの空間と有り余る時間を前にどうして良いのか分からなくて、途方にくれてしまった。
真新しいその学生マンションのベランダから見えるのは、広い空、山の斜面に立つ大学の校舎、田んぼ、後はコンクリート工場のサイロだけ。
一日の授業が終わると、(親代わりにしていた)友人をまねて、自炊を始めていたぼくは、食材の買い出しへ行き、そして夕飯を終えると後はひたすらテレビ相手に一人の時間を過ごしていた。
毎日の買い出しは駅前のスーパーなのだが、歩くと片道40分近くかかるので、自転車で通ったのだけれど、田んぼ脇の通りは狭く、車を避けつつぎりぎりで走らねばならない。なので卒業までの4年の間にその友人もぼくも田んぼに落ちた。ぼくの時は水がはられていなかったのだが、友人のときはどうだったろうか、それが思い出せない。
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続きはまた。
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