2020年6月14日日曜日

2020/06/13 ノックの音 その2

ぼくの好きな画家に「野又穣」さんがいる。
学生のときに池袋の西武百貨店ギャラリーで初めて見た。
野又さんの描く建築物は、(矛盾した言葉だけれど)近代的な遺跡のようであり、見ていると不思議な気持ちにさせられる。
写真はうちの近所にある給水塔。
曇り空と塔の佇まいに野又さんの世界と通ずるものを感じた。

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ノックの音 その2

前回からの続きで、一人暮らしを始めた頃のこと。
大学が始まってしばらくの間、ぼくは同じ学生マンションに住む友人と通学した。学校は狭い道路を挟んで目と鼻の先だった。1回生の頃はまだ授業が多く、ほぼ毎朝、彼と廊下で待ち合わせ(同じ階に住んでいた)て学校へ向かった。一人暮らしを始めてから何故か朝シャン派(朝シャワーを浴びる事。洗髪や身体を洗うのは勿論、髭剃りもこの時にする)になっていたので、朝は朝食を食べ、シャワーを浴び、教科書を抱え、それからドアを開けて外へ出る事になる。
ただし、中学からの夜型体質にはますます磨きがかかっていたので、いくら大学の近くに住んでいても目覚めは悪く、いつもぎりぎりまで寝ていた。
その日もやはりぎりぎりで、急がないとまずいな、と思いながらぼくは朝シャンをしていた。すると、ドンドンとノックの音がする。遅いので迎えに来てしまったのだろう。中で待っていてもらうしかない。腰にバスタオルを巻き、玄関のドアを開けた。でも誰もいない。なんて事だ、先に行ってしまったのだ。しかたないか。ぼくは頭に残ったシャンプーを流すため、改めてシャワーを浴びていた。するとまたドンっとノックの音が。ぼくはタオルを巻くのもそこそこ(何しろ18歳だったのだ)にドアを開けた。が、やはり誰もいない。不思議でならなかった。
それから服を着てバッグを抱え、ぼくは友人の部屋をノックしてみた。彼は部屋にいた。2回も迎えにに来たでしょう?と聞いてみると、「いや行ってない、でもうちでもノックの音がした」との事で、2人して不思議に思いながらマンションの階段を降りようとした時、ドドンっと爆発音が響いた。ノックの音はこの爆発音が原因だったのだ。それは田んぼに来る鳥を追い払うためのものだった。ぼくは早朝からのこの爆発音に悩まされたが、なぜか翌年からは無くなった。

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次回は一人暮らしの朝食について書きます。

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