2016年3月7日月曜日

2016/02/16 デヴィッド・ボウイ 遺作を見て、聴いて:その2



写真は多重露光で撮ったもの。

デヴィッド・リンチ監督の映画「ロスト・ハイウェイ」では、
ヘッドライトに暗く浮かび上がった路面の映像がとても効果的に使われている。
このシーンは車を運転する男の視点で撮られていて、次々と後方に流れ去る境界線が、
嫌が応にも見るものに不安を覚えさせるのだ。

この時、後ろに流れるのがデヴィッド・ボウイのI'm Derangedだ。
まるでこの映像のために作られたんじゃないか、と思うほどこの曲は
このシーンに溶け込んでいる。

そのボウイの遺作であるブラックスター。
このアルバムのPVを見ていて、ぼくはカンボジアで出会った青年に音楽テープを
貸したときのことを思い出したのだった。

テープに入れていたローリング・ストーンズと、それにビートルズも、
その青年は知らなかった。それどころか、テープを返してもらう時には、
この音楽はうるさくて好きじゃない、と彼は言った。

驚いたのは、宇多田ヒカルは持ってきていないの?
と聞かれたことだ。

ストーンズより、ビートルズより、宇多田ヒカル。
とても驚いた。

それで考えてみたのだけれど、これは「映像」の問題なんじゃないかと思う。

ぼく自身、高校生の時に従兄弟からストーンズのCDを借りて、始めて聴いた時には
好きにならなかった。その時は、なんだかダルい音だなぁ、って印象を持っただけで、
聴き込む気になれなかった。

そんなストーンズが好きになったのは、ライブの映像を見たからだ。
ミック・ジャガーのパフォーマンスで音楽の持つ力が視覚からも入ってきた。
それにライブ映像(照明・編集)の力も加わるから、その魅力は倍増だ。
目から入る情報の力は、とても大きい。

そうやって考えてみると、普通に気持ちの良いものとして音楽を楽しむのなら、
宇多田ヒカルが良いのかも知れない。

今はYouTubeがあって、音も映像も詰まるところデータなんだ、ってことが
分かるようになった。
(レコードも、CDも、ビデオやDVDもデータなだけれど、少なくともこれらは、
それを手に入れるためにそこまで買いに行く、生身の体を移動する必要があった)

今やデータは机の上、目の前に無数にある。
その中から、自分が欲しいものを、探す必要がある。

デヴィッド・ボウイの遺作「ブラックスター」。
ぼくは、未だにまだ買うかどうか、迷っている・・!

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